SHARP ホームへ戻る

Zaurus
製品情報
活用ガイド
ビジネスソリューション
コミュニティ
サポート
ソフト・コンテンツ
デベロッパー
Zaurusトップへ

MI-E1開発ストーリー

 
「MI-E1開発ストーリー」へ
ザウルスMI-E1開発ストーリー ハードウェア設計編
 
物欲主義ライターわたなべけんいちがお送りするザウルスMI-E1の開発ストーリー。
今回は優秀なマシンのパフォーマンスを陰で支えているハイテク技術に迫ろう。





●クリーンルームで組立? 〜反射型液晶に秘められた苦労と努力〜

ザウルスシリーズで反射型液晶をはじめて搭載したのは、ザウルスカラーポケット<MI-310>で、<MI-E1>は3代目となる。MI-E1の液晶はサイドライトを搭載し、点灯時には最高の美しさでビデオ再生やアプリケーションの視認性を引き立たせている。
そこで液晶の開発担当のモバイルシステム事業部技術部の野田完三氏にインタビューした。



野田: MI-E1には「モバイルビデオ」というコンセプトが課せられていました。これを実現するためには、通勤途中や室内/屋外などいかなる環境の中でも視認性のよい表示でなければなりません。また、当然のことながらPDAとしてのサイズも重要です。そこで、今までのノウハウを活かせる反射型カラー液晶にフロントライトという組み合わせを選択することにしました。


MI-E1の液晶は6万5千色表示で、240×320ドット。利用環境としては屋内での蛍光灯などの人工光や屋外での自然光、暗い場所での利用などが考えられる。そういう意味ではノートパソコンよりも過酷な状況下で使われる。


野田: MI-E1の反射型カラー液晶は、太陽光の下でもっとも明るく、美しく表示されます。室内や暗い場所でも同じ美しさで表示するにはフロントライトの性能と、その光を液晶全面に均一に広げる技術が重要でした。



フロントライトというのは液晶の真横に蛍光灯のようなランプを配置するものをいう。しかし、液晶は真上(液晶面に対して垂直方向)からの光を受けて発色する。つまり、真横から出た光を90度下向きに曲げて、さらに液晶から反射された光を我々の目に見えるように真上に透過させることが求められる。



野田: もっとも重要な部品が導光板で、真横の光を液晶に導くものです。ライトと液晶との距離は左右で全く違うので、均一な光を当てるために表面にプリズムがたくさん並んでいます。フロントライトの光の均一化の調整では、画面を9分割して、それぞれ均一になるようにテストを繰り返しました。また、液晶にはもう1つ大切な部品があります。それが偏光板で、液晶を表示させる為に出入りする光をコントロールするものです。この2つの部品をどのように配置するかで、コントラストや明るさが違ってきます。液晶との距離も重要でした。結局、導光板に偏光板を貼り付けて、コントラストを向上させるチューニングにしました。そのために、明るさはライトの電流で調整し、さらにライトの色も厳選して、現在の発色をさせています。もちろん、液晶自体も、動画を表示できるだけの応答性の高いものを厳選しています。


MI-E1をお持ちの方はぜひお試しいただきたいのだが、太陽光下での色とフロントライトで見た色がほとんど変わらない。さらにフロントライト点灯時に、液晶全体の明るさが本当に均一。この技術は、単に部品選びだけではできないらしい。


野田: フロントライトというのは、組立時のゴミ対策が難しいということがMI-310の時にはっきりしていました。液晶とライトなどの部品が別々のパーツになっていて、液晶の上に導光板、タブレットを重ねて組み立てていくのですが、導光板、タブレットと液晶の間にあるゴミや傷が、バックライト方式では問題ないレベルでも、フロントライト方式では、ライトからの横方向の光によって浮かび上がり、目立つのです。
そこでMI-E1の製造工程では液晶部分の組立ではクリーンルームを使用することはもちろん、部品搬送に際してMI-310を生産したときのノウハウを活かしたゴミ対策をしました。


さすがに多くの世代を乗り越えて開発されたMI-E1。他のメーカーにはできない工夫が詰まっている。




●ビデオレコーダーCE-VR1はPCだった

次に、ビデオ鑑賞という新しいコンセプトを提供してくれた縁の下の力持ち、MPEG4ビデオレコーダーCE-VR1およびMI-E1の音声機能の秘密に迫ってみよう。ハードウェア開発に当たったのが、同じくモバイルシステム事業部技術部の堀川豊史氏である。


堀川: MI-E1を手がける前には、MI-310以降のザウルスで利用できるMP3プレーヤーAP1を作りました。音楽は他の仕事をしながらでも聞きたいですよね。だから、本体に負担をかけずにMP3を再生する必要があるんです。そこでオプションポートに接続できるMP3の再生ハードウェアを作ることにしたんです。


AP1はオプションポート16につなげるコネクタ、リモコン、イヤホンの3つの部分でできている。なんとあの中にMP3の再生用ハードウェアが入っているというのだ。乱暴な言い方をすれば、あの小さなリモコンヘッドホンにメモリと電池を付ければMP3プレーヤーになるということ。部品は切手大の基盤に載っていることになる。しかも低音までしっかり出るアナログ機器としても優秀な性能を持っている。


堀川: MI-E1の設計が始まったときに、MP3やビデオ再生が必須だったので、AP1のような機能をMI-E1の中に入れてしまうことになりました。具体的に言えばDSP(デジタル・サウンド・プロセッサ=マルチメディアデータを作る専用のCPUのような部品)が入っています。つまりですね、MI-E1はアプリケーションを動作させるビジネス用の頭脳と、音楽などを再生するためのマルチメディア用頭脳の2つを持っているんです。



これを聞いて、小生はかなり興奮してしまった。DSPを搭載してあるということは、MI-E1をしゃべらせたり、シンセサイザーのような楽器にすることもできる。つまり、パソコン同等のパワーを持たせてあるというのだ。今後は、MOREソフトでもっとおもしろいことができるに違いない。
しかし、MI-E1と同時に発売になったCE-VR1も、かなりユニークな製品だ。最近、画質をユーザーが自由に設定するためのユーティリティソフトが公開された。ということは、CE-VR1の中身はPCなのか?



堀川: もともと試作段階では、MPEG4の再生機能やUSB接続でPCとやりとりするような機能も持っていました。最終的には、録画専用の現在のコンセプトにまとまりましたが、中身はフラッシュROM搭載のプログラマブルなマシンです。



フラッシュROMで設定が変更できるというのは、中身が広い意味でのコンピューターになっていると解釈していいだろう。とくに映像のように、色やコントラストという個人の好みで見てみたい場合には、このような構造はありがたい。


堀川: VR1の中身にもDSPが入っています。多くの技術は弊社のインターネットビューカムの技術を使っています。技術者としての夢としては、CE-VR1の技術を発展させて、MP3のエンコーダー(録音機器)なども作ってみたいと思っています。


MP3ファイルの作成は、現在はパソコンに頼っている。これをCE-VR1のような小さな機器で行えるようになることはありがたい。堀川氏には、もっともっと頑張ってもらいたいものだ。
MI-E1がもつマルチメディアへの可能性、VR1のユニークさ。ますます、楽しさが広がるザウルスの世界だ。
次回は、ザウルスのもう1つの楽しさであるコンテンツの世界に迫ろう。


前ページ次ページ

  このページのトップへ
COPYRIGHT