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モバイルライターわたなべけんいちの直撃インタビュー。今回はMI-E1の斬新なデザインについてだ。
●より愛着をもって使ってもらえるデザインに
MI-E1はキーボードを搭載するなど、今までのザウルスとは違ったデザインが要求されたはず。加えて、今まで以上に美しく仕上がっている。このあたり商品コンセプトの松本融氏はこう語る。
松本: |
デザイン上のコンセプトはエンターテイメントとしての楽しさにあります。具体的にいえば20〜30代の大人の楽しみを演出するということにあります。
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MI-E1には3つの「e」がある(初回インタビューを参照)。その1つであるエンターテイメントに基づくデザインコンセプトとは何だろうか?
松本: |
ワンハンドの操作スタイルで、人前でも使える見栄えがするというデザインを作ってもらいました。今回のデザイン担当は、弊社の家電でのヒット商品を手がけている人材の起用です。
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モバイル機器のデザインは、工業意匠の中でも難しい部類だといわれる。つまり、ボタン1つにしても、その配置や機能の割り当てなど、自然な使い勝手の良さを求められる。制約が大きい中で、見た目の良さなどを追求する仕事になる。デザイン担当の総合デザイン本部開発室 係長 小山啓一氏にたずねた。
小山: |
今回のザウルス<MI-E1>のコンセプトは、“エンターテイメント”ですから、今までのザウルスより愛着を持って、使ってもらえるようなデザインを目指しました。
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今回のデザインはエンターテイメントを軸にデザインが進められている。この点については後ほどカラーバリエーションを含めてインタビューしたので、参考にしていただく。まずは、形状のデザインに迫ろう。
小山: |
このデザインにたどり着くまでに、数多くのコンテやモック(見本)を作りました。難しかったのは、これまで手がけてきた家電と違って、手に持って、触って、操作するという点です。さらにスライド式キーボードやLED、2メモリースロットなど大きくなる要素が多い中で、手になじみ、小さく、そして使いやすくする必要がありました。
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このMI-E1のデザインは、これまでのザウルスとはかなり違う。たとえば本体全体を包む銀の上下のカバーとそれに挟まるダークグレーの樹脂素材のサンドイッチ構造。
小山: |
この部分は自動車をイメージしてバンパーのようにしています。その分だけ本体は大きくなってしまうのですが、持った感じをよくするには大切なデザインです。
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このようなデザインはめずらしい。というのは、PDAの世界では0.1mm単位で本体を小さくする努力が行われる。つまり、小ささが至上命題であり、本体を小さくするのが開発者の技量でもあり、最高のノウハウだ。ところが、このバンパー部分は構造上の制約で外側に出ているのではなく、「デザイン」としてこういう構造になっている。つまり、機構としてはもうすこし小さくできるのに、MI-E1では思い切ってデザインとして大きくなる方向を選んでいる。しかし、この部分のおかげでぱっと手に持ったときにこの部分がしっかり指に当たり、ホールド感がいい。単にスペックで小ささを競うのではなく、使いやすさを重視したデザインなのだ。
小山: |
キーボード収納部分にはもっとも力を注いでいます。ボタンと十字キーがあるパネル部分の曲線が、このMI-E1のキーボードの使い心地や手の疲れに大きく影響します。3Dの設計マシンで図面を作って、それで金型を発注します。でも、機械設計のままでは満足できなくて、”金型確認”という金型工場で最終確認というときに自分でヤスリを使って今の曲線になるまで仕上げたのです。金型工場の責任者には、それは金型確認じゃなくて金型制作だ、と怒られましたけど。
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たしかに定規とコンパスで描いた図面では作り出せない微妙なラインだ。デザイナー自身が金型を手作業で仕上げるまで力の入れよう。もっとよく見ると、この部分はボディーの下方に向かって絞られている。つまり、電源ジャックのある側が細くなっている。
小山: |
機構設計陣ががんばって小さく作ってくれたので、このようなデザインができました。絞り込まれていることで、片手で持ったときの持ちやすさが向上しています。
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なるほど、たしかに手に収まりがよく、よけいな力がかからないし、手に当たることもない。それにしても、各部分は凝りに凝った構造になっている。その電源ジャックの部分のあるボディーの形状(写真1)、SDスロット(写真2)、CFスロット(写真3)。単なる箱からかけ離れた細かいデザインになっている。短期間の開発でありながら、ここまで配慮されている製品は見たことがない。
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●色のこだわりに迫る
さらに、MI-E1を特徴付けているのが各部品に色使いだ。このデザインはデザイナー総合デザイン本部開発室 係長の竹下由美子氏である。斬新なデザインのFAXでヒット商品を生み出したシャープでも注目のデザイナーだ。
竹下: |
今回のデザインのイメージは、ジュエリーです。持っていて誰かに見せたくなるようなデザインなんです。キラっと輝くボタンも人に見せるジュエリーというイメージからです。
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たしかに、色で目がいくのが黒に赤いラインの十字キーとその左右の横長のメタリックのボタン、さらに左右対称のボタン配置ではないだろうか。ボタンサイズが小さくやや押しにくいかもしれない。しかし、これを見れば、どれだけデザインが重視された商品かがよくわかる。たとえば時計はデザインが命と言われるが、PDAにもそんな時代が到来したのだ。
小山: |
ここも竹下さんのセンスです。キーの色とキーの下のパネル部分の色は様々な組み合わせを考えて現在のデザインになりました。
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ぱっと見ると自然だ。しかし、よく見て欲しい。銀のキートップに黒のパネルというキーボード。パソコン用のキーボードでこんな色使いは見たことがない。キートップの艶やかさや機能の緑の文字。どれを見ても、これまでのキーボードのイメージとは違うのだ。それでありながら自然さを感じさせる。色の魔術とでも言えばいいのだろう。
また、3月3日からは、パールホワイト、ライラックのカラーバリーエーション2機種が限定発売されることになった
竹下: |
これは、昨年10月の“CEATEC JAPAN 2000”で参考出展したカラーバリエーションに対する反響を考慮して作りました。このイメージは”ブランド商品”です。
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昨年10月の「CEATEC JAPAN 2000」で出品されていた色違いのバージョン。パステル調とでも言い表せばいいのか、とにかく美しい。あの美しいザウルスをデザインしたのが竹下由美子さんだったのだ。MI-E1の発表会でも人だかりができていた。
竹下: |
あれよりも、さらに美しく、女性にも楽しんでもらえるデザインになったと思います。
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次回は、ビデオプレーヤーやレコーダー、様々なアプリケーションの開発者に直撃してみよう。
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